最近、いっそう目に触れる機会が増えてきた「デザイン経営」のもとになる「デザイン思考」という概念ですが、日経新聞には「アート思考」と「デザイン思考」の違いをテーマにした連載もあるほどです。

皆さんも「経営戦略」という視点から「なんとか、かんとかシンキング」という言葉を聞くと気になる人が多いのではないでしょうか。

こういうワードって、企業人にとってはビジネス用語として知っているかどうか、を気にするだけの人もいるでしょう。

また、これらのビジネス指南書等を読んで、その内容に共感して真正面から経営戦略に組み込む経営者もおられるでしょう。

一方で、「デザイン思考」とか「デザイン経営」という言葉が企業ビジネスでもてはやされている状況に、「デザイナー」を職業とする人たちなど、どこか腑に落ちないもやもやした気分になる方もおられるでしょう。

そんな意見を堂々と正面から表明できるデザイナーは少ないかもしれませんが、そうした中で、「デザインシンキングなんて糞くらえ」という講演を行った人が「ナターシャ・ジェン」さんです。

「ナターシャ・ジェン」の講演の趣旨を紹介するこちらの記事が詳しいです。

 

皆が称賛して、もてはやされる「バズワード」だからこそ、それに批判的な意見も出てくるのが当然の流れですが、「批判のための批判」ではなくて本音で疑問を表明された内容として注目されているということですね。

 

「デザイン思考」はまだしも、もっと怪しいのが特許庁が旗振り役で出されている「デザイン経営」という言葉です。

企業筋では、なかなかお国の方針に面と向かって批判するというのは気が引けると思いますが、こちらに正面から切り込んで、批評というより批判した記事もちらほらあります。

それがこちらの記事。ナルホドね。

「デザイン経営という言葉の空虚さ」

 

こういう記事を読んで「空虚」とか言われると、今度は「デザイン経営」って意味がない、と無視してしまう人も出てきそうですが…

 

一方で、早くからこのデザイン思考を徹底して企業経営に取り入れて事業の方向性そのものを変革しようという巨大企業の一つが、かつてのコンピューターの巨人「IBM」です。

シリコンバレーでは、デザイナーの採用が近年、急増している、という事実もあります。

 

私が言いたいのは、正統派の意見も反対派の意見も、どちらも盲目的に他人の意見をそのまま受け入れるのでなく、自分の頭でもう一度咀嚼しなおして「誰が何と言おうと、自分はこう考えたので、このようにやる」という自分流、オリジナルな思考法を見出すことが大切なんじゃないでしょうか。

何事も盲目的に信じるのでなく、批評的視点からも考える、というと「クリティカル・シンキング」というワードにつながってしまいますが、「バズワード」だから否定する、という天邪鬼的な批判ではなく、独自の考え方を見出すためにこそ、

「多様な視点で見る、考える」、というスタンスが大事かと思います。

クレバーな考え方を真似する=学ぶ=という中から、本質を見出して、そこからオリジナルな何かを生み出すこと、そして、それが無意識のうちにできるほどに訓練された人には、もう「直観的」にそれができる。

そういう状態で生み出されるのが「クリエイティブ」の本質のような気がします。

それが身についていない人が、このようなシンキング理論だけをちょこっと学んだ程度でできるほど、デザインもアートも「クリエイティブ」も甘くはない、ということかと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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