「刺さるマーケティング」というと、好みが極端に偏った奇人変人だけにウケるようなマーケティングだと勘違いされる方もいるかもしれません。
その結果、多くの一般顧客から嫌われてしまって、目指す市場シェアを取れなくなる、という心配をしてしまい、「多くの人にウケそうな」広告やコンテンツ、製品やサービスを作ってしまいがちです。
しかし、今の価値観が多様化したこの時代に、果たして「多くの人にウケる=たくさん売れる=ローリスクで費用対効果が高い」という図式で売れる商品やサービスなのか、冷静に分析する必要があります。
アンケート統計の事例でいえば、5点満点中の評価で3点とか4点という、「普通、まあまあ良い」という回答が7割、8割あるからと安心してはいけない、ということと似ています。
圧倒的に良い、という5点満点の比率が高い商品やサービスでないと、実際には激しい市場競争には勝てない、儲からない時代になっている、ということかと思います。
そこで、イノベーター理論における「エクストリームユーザーとマジョリティ」という考え方をご紹介しておきます。
イノベーター理論とは、スタンフォード大学のE・M・ロジャーズ教授の著書『イノベーション普及学』( 1962年)で提唱された、新しい製品やサービスの市場への普及率に関するマーケティング理論です。
イノベーター理論では、普及過程を5つの層に分類し、これを基にマーケティング戦略、市場のライフサイクルについて検討することの有効性を説いています。
「イノベーター理論」におけるユーザー分布図は以下のようなものです。
新しい商品やサービスの受け入れが早いものから順に以下の通り。
A.イノベーター(Innovators):革新者
B.アーリーアダプター(Early Adopters):初期採用層
C.アーリーマジョリティ(Early Majority):前期追随層
D.レイトマジョリティ(Late Majority):後期追随層
E.ラガード※(Laggards):遅滞層
※ラガード
ラガードとは、イノベーター理論における5つのグループのうちで、最も保守的・伝統的な層。
世の中の動きに関心が薄く、流行が一般化してからそれを採用することが多い。中には不採用を貫く者もいる。
エクストリームユーザーとはAB=16%とE=16%で、マジョリティはCD=68%とされています。
普通に大衆向けの商品やサービスを考える時でも、必ずしも最初からマジョリティ向けに製品やサービスを開発することが優位とは限りません。
一見すると、誰にでもウケそうなものは、実は、いまや誰にも見向きもされない、という可能性が非常に高い、そういう商品やサービスのカテゴリが溢れている時代だからです。
そこで、「AとB」の「エクストリームユーザーに向けた刺さるマーケティング」を展開することで、他社よりも機先を制し、その後にマジョリティが雪崩を打って購買しトップシェアを獲得する、という図式を狙う訳です。
つまり、「何かを尖らせて、誰かに刺さりやすい」というマーケティングの本質は、何も「奇人変人」にだけウケる極めて狭い市場を狙って「尖らせる」場合だけではなく、
最終的には「マジョリティにも受け入れられる」ものを狙う場合にも必要なマーケティング戦略ということが言える、そういう時代になっている、という時代認識が必要でしょう。